株式会社Pyrenee 代表取締役 三野龍太 氏「役立つ・使える・楽しい」を追求して危険のない社会を実現する!~ドライバーをサポートするAI運転アシスタントからスタート | イノベーション創出のヒント JMA GARAGE
FacebookTwitterYouTube
FacebookTwitterYouTube

株式会社Pyrenee 代表取締役 三野龍太 氏
「役立つ・使える・楽しい」を追求して
危険のない社会を実現する!
~ドライバーをサポートするAI運転アシスタントからスタート

J-TECH STARTUP認定企業の株式会社Pyrenee 代表取締役 三野龍太氏にインタビューしました!

ほとんどの交通事故は、ごくわずか数秒の間に起きる。逆に、その数秒に注力して、事故を減らせないだろうかというのが、同社のAI運転アシスタント開発に至る発想です。

社名の由来は、フランスに生息するピレニー犬から来ているとのこと。羊飼いの家族や羊たちを、オオカミや熊から守る強くて優しい犬です。代表の三野さんは、ものづくりの経験を重ねてきた中で、危険から人を守るプロダクトづくりに注力したいと、同社を立ち上げました。第1弾製品である「Pyrenee Drive(ピレニードライブ)」が生まれた背景について、お話を伺いました。

危険から人を守っていける製品をつくりたい

――― ずっとものづくりに携わっていらっしゃるんですね

そうですね。製品開発がすごく好きなんです。ですので、何かの製品を開発するというのは一貫してきました。中でも、最終製品という点にこだわっています。ユーザーさんの喜ぶ声を聞けるのが何よりだと思っています。

――― 中でも今は、人の命を守る製品に注力されていると

はい。限られた時間でどういう製品をつくっていこうかと考えたときに、一番存在価値の高い製品、最高に存在価値のある製品を世に生み出していきたいなと考えました。その中で行き着いたのが、安全を守っていく製品だったんです。

――― なるほど

AIアシスタント

すべての人にとって安全は大事ですので、それを実現できる製品は何だろうと考えました。それで開発したAI運転アシスタント「Pyrenee Drive」は、歩行者、運転者、同乗者すべての人が、事故でけがをしたり命を落とさないことを目指しています。ただ会社としては、このAI運転アシスタントがすべてではなくて、危険から人を守っていくような製品を、まだまだ継続的に開発していきます。

――― 第1弾が現在ということですね。ちなみに「Pyrenee Drive」の開発となると、従来手掛けられていた雑貨の製品開発とは、専門性がずいぶん違うように思うのですが

そうですね。こういうテック系の製品をつくるのは初めてです。ただ、基本的には目的を達成するために何をするかということなので、日用雑貨でもテック商品でも、ユーザーに役立つためという視点は変わらない。テクノロジーが加わっても製品開発の根本は同じだと思っています。

――― 確かに。ちなみに、「安全」という発想からなぜAI運転アシスタントという製品に行き着いたのでしょうか

人の命を守る製品として何がつくれるかというのを、まず考えたんですね。やはり僕らは病気を治す特効薬のようなヘルスケア領域は難しい。そんな中で、自分が毎日車に乗って生活していたので、車の事故に目が行ったんです。特に自分の子どもが歩き出すようになると、交通事故は本当に恐ろしいなと思いました。

――― 毎日どこかで事故が起きているような状況ですよね

調べてみると、毎年何千人という人が交通事故で亡くなっていて、50万人以上がけがをしているんです。統計的に見ると、日本人の2人に1人は一生のうちに1回は交通事故でけがをするという計算になる。本当に他人事ではないですよね。さらに世界でも、交通事故はどんどん増えているんです。

日本の交通事後の現状

交通事故の原因はヒューマンエラー

――― 改めて聞くとものすごく大きな数字です……

今、自動運転が話題になっていて、開発が進んで素晴らしいことだと見ているのですが、とはいえいろいろと調べると、完全な自動運転が実現するにはまだ50年はかかるそうなんです。つまり、人が運転する状況がまだまだ続くんですね。ここを何とかできないかと考えました。

――― そこの部分ですね

よく考え見ると、交通事故って原因は数秒にあるんです。原因の4分の3が、発見が遅かった、気づかなかったということで、あとは判断ミスや操作ミスです。ほとんどが数秒間に起きるヒューマンエラーで、それはゼロにすることがなかなかできない。じゃあこの数秒をテクノロジーの力で何とかできないだろうかと考えました。

想定より何倍も難易度が高かった開発

――― 実現したい状態まで苦労されたのもあるのではないかと思いますが、どういう点が大変でしたか?

事故を防ぐためのサポートを実現するには、相当高い能力が必要だというのが、着手してからわかってきました。ちなみに今の製品は、AIを処理できる強力なGPUチップを積んでいて、それがフル回転しながら道路状況を認識したりしているんです。でも当初は、センサーが反応するような、もう少し簡易な製品を想定していました。

――― 当初想定したのよりも、格段に高度なことをやっているわけですね

いろいろな事故状況を研究したり、実験していったりすると、人のパートナーとしてちゃんと働くには、助手席にもう1人誰か乗っているくらいの存在にしないといけないことがわかってきた。それで、ハードウェア的にもソフトウェア的にも、どんどん難しいことに挑戦しました。

――― 見た目はものすごくすっきりしていますが……

この中で、ステレオカメラの立体映像を解析・予測して……それを、ドライバーに画面表示や音声で会話しながら伝えていくんです。予定より時間もかかってしまって、当初は設立から2年くらいでリリースするつもりだったのですが、5年目になる今年、ようやく発売の目途がたってきました。

――― どんどん計画をアップデートする必要もあったと思いますが、そういう開発スタイルは慣れていたのでしょうか?

開発しながら見えてくるものがたくさんあるので、昔からどの製品も、途中で更新を重ねてきてはいます。ただ、ここまで大幅に想定以上のものが必要になったのは初めてで。ここまで必要なのか……と最初は果てしない道のりに思いましたよ。

――― 開発中にいろいろと取捨選択する場面が生じる気がするのですが、開発におけるモットーのようなものはございますか?

原則はユーザーの意見を最重視なのですが、発売前には何が大事か見えないことも多いです。ですので、今僕らが注力しているのは、どんなこともできるキャパシティーを持つハードウェアを設計するということですね。あと、ソフトウェアのアップデートもいかようにもできるようにすること。

――― 最大限のことをできるようにしておくということですね

そうです。ドライバーのサポートをするというのは相当奥が深くて、発売後も地道に改良を続けていくという前提です。だからこそ、最初からそれができるハードウェアにしておく必要があるんです。

全国での運転経験が共有され、どんどんシステムが成長する

――― 技術面で言うと、先ほどおっしゃったGPUチップや画像の三次元処理、AIの物体認識などが含まれていますが、それらの組み合わせが特徴であり強みなのでしょうか

その通りです。僕らは技術会社というより製品メーカーなので、製品としての悔過にこだわっています。そのために必要な技術を逆算して考えて、探すかつくるかして、それらを融合して1つのシステムにまとめるところに力を入れました。

3つの機能を搭載

――― 「融合」と一口でおっしゃいますが……

融合の仕方はすごく難しく大事なところです。つぎはぎではなくて、あたかも1つのもののようにまとめていく。もちろん、1つ1つの技術をつくるのも、探してくるのも大変なことなんですが、1つの製品にまとめていくところの能力は、非常に僕らが強みとしているところです。

――― そこは開発チームで担っているわけですね

そうですね。社内だけでなく副業で参画している技術者もいますし、会社単位で参加しているところもあります。

――― 運転に関わる製品ということで、自動車メーカーさんとの協働もあるのでしょうか?

いえ、現状としては、そこは別なんです。自動車メーカーさんは、絶対に間違いが起きてはいけない製品をつくっていらっしゃるので、発想が180度違います。本当に最先端のものは法的な面、認可面から考えると、まだまだ同じ土壌に上がっていません。仕方ないと思うところはあります。

――― そういうことですね

僕らの製品は、完全さを目指すよりも、今できることを突き詰めていくという考え方でやっています。それがユーザーの役に立つやり方だと思っていますからね。だから、AIで道路の状況判断や予測をするわけですけれど、それが100%ではない。それをユーザーにしっかり伝えて理解してもらうことは、もちろん最初に行うべきことです。

――― そうした理解は重要ですね

「絶対に間違えないです」と言うと、絶対に間違えない程度のことしかできなくなる。でもこの製品は、提供できる価値が大きいものを積極的に入れていって、みんなの経験をたくさん共有しながら、どんどん成長していくものなのです。だから、購入いただいた後も、定期的に「過信しないでください」という発信をしながら、今できる最先端のことを求めてやっていくつもりです。

――― なるほど、理解しました。

車を制御しないからこそ実現できる面もあるんですよね。自動運転の世界では、自動ブレーキによって車自体を制御する必要がある。そこは、絶対に間違いが起こってはいけないんですよ。法的な認可も必要です。一方「Pyrenee Drive」は、車を制御しないからこそ、法律的な縛りから解放されている面はあります。

使う楽しさづくりも開発の大事なポイント

――― いよいよ発売が現実化してきましたね

はい。まだ価格を決めていないんですけれど、最初はちょっと高めかもしれません。でも普及との両輪で、徐々に価格も押さえて、できるだけたくさんの人に使ってもらえるようにしていきたいですね。

――― 海外でも発売されるとか

同時ではないですが、極力早いタイミングでやろうと準備しています。アメリカから展開しようと思っていて、左ハンドル・右側通行の国でも使えるような開発もしています。

――― そのような現在の事業化フェーズでは、開発フェーズとはまた違った難しさを感じていますか?

そうですね。事業化フェーズはやはり、どれだけ知ってもらえるかどうか。製品や会社の認知度を上げていくこと、そのために情報発信していくことが、これからももう1つの大きなテーマだと思っています。

――― 量産する過程でシャープさんと支援協定を締結されたと思うのですが、どういう流れで実現したのでしょうか?

シャープさんは、僕らが入居しているDMM.make AKIBAというスタートアップ向け施設のスポンサーでもあるんです。そこのイベントで出会って、ものづくりブートキャンプというような場でも関係性が深まってきて…。僕らの量産が現実化した頃に、具体的な話をしました。

――― なるほど

そこで量産支援協定を結んで、本格的に進む流れになったんです。やはり量産というのはスタートアップにとってハードルが高いです。きちんと目的のテーマを達成するものがつくれることと、大量生産というのでは、また別の技術・経験が必要になりますからね。シャープさんは高品質での量産を得意とされていますので、その部分で合致しました。

――― 実際に試行したユーザーの声はいかがでしょう

試作機の段階で使ってもらったレベルではあるのですが、実際にトラックのドライバーの方々とかが「これいいね」「あったらいいんじゃないかな」と言ってくれたのはとても良かったですね。その期待を裏切らないようにしっかり開発していきたいと思いますが、良い感触が得られたのはうれしかったです。

製品イメージ

――― まさに「使える」感覚が得られたわけですね

画面の見やすさ、おもしろさも感じてもらえたようです。もちろん、車が止まっているときにしか画面表示は出ないのですが、僕らはそこで伝わる楽しさも意識して開発してきました。安全が最優先ですが、製品としてはたくさんの人が使いたくなる、楽しめるということも重要だと思っています。

――― この先の未来はどのように描いていらっしゃるのでしょうか

現在は「Pyrenee Drive」に全力で取り組んでいるところではあるのですが、発売の3年後にはまったく別ジャンルの製品も出したいと思っています。そのために次なる体制も構想しながら、まずは今に集中、といった時期ですね。

――― ありがとうございました

PROFILE

三野 龍太
株式会社Pyrenee 代表取締役 CEO

1978年生まれ。東京都出身。建築工具メーカーで製品開発を経験した後、独立して雑貨メーカーを立ち上げデザイン、生産、販売を行う。本当に人生を賭けるべきモノ作りとは何かと考えた結果「人の命を守るたのしい製品をつくる」という答えに行き着き、2016年にPyreneeを立ち上げる。
最初の製品となる「Pyrenee Drive」の2021年発売へ向け、製品開発と量産準備を進めている。

Pyrenee について
2016年創業。人生で遭遇するさまざまな危険から人をまもり、強くたのしく生きていくために役に立つ製品をつくることを目指します。クルマのダッシュボードに設置するだけで利用できるAI搭載の運転アシスタントデバイス「Pyrenee Drive」を開発中。
Web site : https://www.pyrenee.net

J-TECH STARTUP」は、技術をビジネスのコアコンピタンスとした事業で、グローバルな成長が期待される国内の技術系ベンチャー企業を「J-TECH STARTUP」銘柄として選定する取り組みです。
TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)による多様な支援や、国内外のネットワークの紹介を行い認定企業の成長をサポートし、国内のディープテックベンチャー企業を成長させるエコシステムの構築をめざしていきます。

JMA GARAGEお問い合わせ
JMA GARAGE最新情報
ご案内