実験室や医療現場をAI & IoT化する三木 啓司 氏 | イノベーション創出のヒント JMA GARAGE
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実験室や医療現場をAI & IoT化する
三木 啓司 氏

三木啓司さんは、製薬業界の会社に勤めながら、「xMedGear株式会社」という会社で、実験室や医療現場のAI & IoT化に取り組んでいます。製薬会社の現状や、実験設備の見守りはなぜ必要なのか、−80°Cの冷蔵庫の管理の話などの業界ならではの話を聞きつつ、三木さんの新たな取り組みについても伺いました。聞き手は、プロトタイピング専門スクール「プロトアウトスタジオ」の校長である菅原のびすけさんが務めました(以下敬称略)。
※本稿は昨年夏に収録の「のびすけ雑談チャンネル」内容を記事化したものです。

趣味で始めた電子工作で起業する

(菅原)
この番組では、テクノロジーを使って課題を解決している方にお話を伺っています。今日は、三木さんにお越しいただいています。まずは自己紹介をお願いできますか?

(三木)
三木啓司と言います。プロトアウトスタジオの一期生で、医薬品の研究受託会社に勤めています。細胞を培養したり、IPS細胞を使ったスクリーニングをしたりして、医薬品の研究をしている会社です。元々は研究者だったのですが、今は研究者を卒業して、事務・総務の仕事をしています。

(菅原)
三木さんは、副業でご自分の会社も経営されていますよね?

(三木)
はい。元々は趣味で電子工作をしていたのですが、その流れで会社を立ち上げました。xMedGear株式会社 (クロスメドギア株式会社)という会社です。実験室や医療現場をAI&IoT化するのがミッションの会社です。

(菅原)
製薬業界で三木さんのようにプログラミングを用いて、課題を解決している方は珍しいのではないですか?

(三木)
そうですね。珍しいと思います。以前、製薬業界のロボットの懇話会に参加した時、Raspberry Piを活用している方にお会いしたことがありましたが、非常に珍しいので、すぐに名刺交換して、今でもお付き合いさせていただいています。

(菅原)
製薬業界では、IT技術をそれほど使わなくても仕事ができるのですか?

(三木)
使わなくても大丈夫ですね。Excelさえ使えれば、なんとかなります。SQLを扱える人がごく少数いるぐらいです。100万種の化合物をデータベース化することもあるので、そういう時にSQLを使います。

(菅原)
それだけの大きなデータになると、Excelではちょっと難しいですね。

プログラミングに取り組むきっかけ

(菅原)
電子工作に取り組むことになったきっかけは?

(三木)
きっかけは、スマートスピーカーでした。Amazonのスマートスピーカー、Alexaです。発売されてすぐに、Alexaを買ったら「これしかできないの?」と思ったんですね。調べてみたら、自分で「スキル」を追加して機能を拡張しなければいけないということがわかりました。それで、「自分でスキルを作ってみよう」と思い、デベロッパーコミュニティに参加しました。そこで、「AWSを使うこと」や「Node.jsを使って、スキルが作れること」などを学びました。

(菅原)
そこで勉強して、ご自身でスキルを作ったのですか?

(三木)
はい、作りました。誰でも使えるようにスキルを公開したら、結構な数の方に使っていただくようになりました。Amazonのおすすめにも取り上げられました。おすすめに出たことで、さらにたくさんの方に使っていただくことになりました。とても嬉しかったですね。自分の作ったものを使ってもらうことが大きな喜びになるとわかりました。

それがきっかけで、さらに勉強するために、IoTLT(菅原のびすけが主催しているIoTのコミュニティ)を知りました。それでだんだんと電子工作に興味を持ち始めた感じですね。

(菅原)
スマートスピーカーから入って、テクノロジーに触れ、さらにIoTLTというコミュニティを発見して、という流れですね。自分の作ったスキルが使われるというのが嬉しくて、そこから「もっと作ってみよう」と思ったわけですか?

(三木)
そうです。多くの人に使ってもらえると、本当に嬉しいですね。

(菅原)
その成功体験が、ものづくりの原動力になっているわけですね。

ロボットを見守るAIカメラを開発する

(菅原)
その後、プロトアウトスタジオにご参加いただきましたが、卒業制作で作ったものを紹介してもらえますか?

(三木)
卒業制作で作ったのは、ロボットを見守るAIカメラです。勤めている会社で細胞を培養するロボットを使っていました。そのロボットを見守るAIカメラです。

ロボットは決められた動作を朝から晩まで正確に繰り返しますが、時々、動作を停止してしまうことがあります。作業が止まってしまうと、とても大きな損害になります。ですので、ロボットが停止したら、すぐにメールで知らせてくれるカメラを開発しました。

開発して、実際に現場で使ってもらったら、「これは便利だ」と喜んでくれました。それで、このシステムはニッチだけれども、確実に「欲しい」と言ってくれる人は他にもいるだろうと思いました。

(菅原)
まずは、自分の職場で試すことができた、というのがいいですね。

(三木)
そうですね。すぐに試してもらえるし、反応もすぐにわかる。そこは非常に良かったと思います。

(菅原)
ロボットが停止しても気づかずに時間が過ぎてしまうことを、ロボット側で防ぐことはできないのですか?

(三木)
作業が止まってしまうのは、ロボットが悪いわけではありません。ロボットはほぼ完璧に作られているのですが、ロボットが持ち上げるフラスコの方に原因があります。フラスコはプラスチックでできているのですが、持ち上げる時に滑ったり、ほんのちょっとでもずれているだけで、つかむことができなくなってしまいます。それはプラスチック製品の歪みが原因です。ロボットメーカーには非はありません。そのような、どうしようもない相性の問題で停止してしまいます。

(菅原)
ロボットが停止すると、そんなに大きな損害になるのですか?

(三木)
ロボットが停止して、長時間経つと、細胞が死んでしまい、とても大きな損害になります。例えば、30分以内であれば、まだ細胞が生きていますが、長く止まったままにしておくと、死んでしまいます。夜10時に止まると、次の日の朝8時に社員が出勤するまで、研究室の様子はわかりません。そうなってしまうと、細胞が弱ってしまって、どうしようもありません。もし、「ロボットが停止しました」とお知らせのメールが来て、30分以内にそこに駆けつけることができれば、復旧できます。

(菅原)
それを解決するためにカメラで監視をするようにしたのですね。色々な試行錯誤した後に、そうなったと思いますが、他の方法も試したのですか?

(三木)
最初は人感センサーを利用しようと考えました。いわゆるPIRセンサーですね。そのセンサーを使えば、ロボットのアームの動きを認識できるのではないかと考えました。

実際に試してみたところ、ロボットのアームは感知するのですが、その実験室の天井の空調機から出てくる温風も感知してしまって、うまくいきませんでした。それで、PIRセンサーはダメだとわかり、カメラでロボットをセンシングすることにしました。

(菅原)
そういうことは、実際にやってみないとわからないですよね。

(三木)
そうですね。やってみてようやくわかります。

(菅原)
他にも製薬業界で解決できそうな課題はありますか?

(三木)
製薬業界は、まだまだアナログのところがたくさんあります。例えば、高圧ガスやボンベのメーターです。そのメーターのデータをデジタルに落とし込むこともできるのではないかと思います。こういったところをデジタル化して、お知らせさせるようにするといった需要は間違いなくありますね。

(菅原)
アナログの部分だからこそ、まだまだやるべきことがあるということですね。

(三木)
そうですね。まだまだありますね。

電子工作の楽しさを知ってもらいたい

(菅原)
今お話されたことが今後の取り組みになりますか?

(三木)
そうですね。そういったものを作っていきたいと思っています。それ以外では、−80°Cの冷蔵庫を実験室では使うのですが、その冷蔵庫の温度が上がった時にお知らせすることができるようになればと考えています。

(菅原)
冷蔵庫が動かなくなることもあるのですか?

(三木)
停電が原因で止まることがあります。長時間の停電はそれほど多く発生することはありませんが、「瞬間電圧低下」は、日常で結構頻繁にあります。電圧が一瞬下がるんですね。それは、雷や台風といった自然災害の時に起こります。おおよそ年に2回ぐらい発生しているでしょうか。

普通は、それぐらいでは冷蔵庫は動かなくなることはないのですが、職員は普段から注意していますので、そういったことが起きるとすぐに駆けつけます。本当に大丈夫か研究室を確認しに行きます。

(菅原)
瞬間電圧低下が発生したら、連絡が来る仕組みはあるのですか?

(三木)
それは既に会社として備わっています。それくらい大事なんです。ダメになってしまうと、今まで作り上げた細胞や材料が全部ダメになってしまいますので、ものすごい損害になります。おそらく何千万円の損害です。ですので、とにかく−80°Cは確保したい。そういう世界ですね。

(菅原)
今の話も含めて、まだまだ解決できる領域がたくさんあるということですね?

(三木)
全ての業種にあるわけではないと思いますが、一部の製薬会社であれば、それはわかっていただけると思います。今は、製薬会社にとどまらず、広く使っていただくためにはどうしたらいいのかなということを考えています。

(菅原)
三木さんが製薬業界のそういう課題に向かおうとしている中で、他にそこに立ち向かおうとしている人はいますか?

(三木)
あまり聞いたことないですね。不思議です。みなさん、本業で忙しいからでしょうか。

(菅原)
ニッチだからなかなか増えないということがあるかもしれないですが、解決しようとする人が増えれば、競争も起こって加速していくようにも思います。

今回は業界にフォーカスしてお話を聞いているのですが、今後の展望を教えてください。

(三木)
自分の会社について言えば、製品を売るためには。どうすればいいかを今考えています。まずは売れる製品を開発しなければいけません。試行錯誤して、いろいろなものを作ってみて、その結果、すごく売れるものが一つでもできればいいかなと思っています。そのために、いろいろなものを作っている最中です。「これは売れそうだ」というものができれば、営業の力も借りながら、展開していきたいと思っています。

(菅原)
製薬業界以外にも広めていきたいわけですよね?

(三木)
そうですね。xMedGear株式会社で受託している案件で、高齢者向けアパートの生活を感じるセンサーを作らせていただいているんですけど、この業界も非常に面白い世界ですね。この分野にも広がりそうなので、挑戦したいなと思っています。生活をしている人を見分けるセンサー及びAIカメラに取り組んでいます。

(菅原)
製薬業界をハックする人がもっと増えるといいなと思いますね。

(三木)
勤めている会社にはいろいろな製薬会社の研究者が集まっているので、そこで「AI&IoTクラブ」を立ち上げて、興味を持っている人同士でコミュニケーションをしています。今後、さらに盛り上げていきたいですね。

(菅原)
これを読んでいる方に、メッセージがあればお願いします。

(三木)
電子工作は楽しいので、みんな電子工作に取り組みましょう。その楽しさを知ってもらいたいですね。

(菅原)
三木さん、今日はありがとうございました。

インタビュイー

三木 啓司氏

三木 啓司氏
大手製薬会社の研究所からスピンアウトして新たに設立した医薬品研究受託会社で、事業推進部に所属。以前は、製薬会社で細胞培養や遺伝子組換え実験などを行う医薬品の研究業務に20年従事。

聞き手

菅原のびすけ

菅原 のびすけ氏
プロトタイピング専門スクール「プロトアウトスタジオ」校長・プロデューサー。
1989年生まれ。岩手県立大学在籍時にITベンチャー企業の役員を務める。 同大学院を卒業後、株式会社LIGにWebエンジニアとして入社し、Web制作に携わる。
2016年7月よりdotstudio株式会社を立ち上げ、IoT・モノづくり領域を中心とした研修や教育業に携わっている。2019年4月にプロトタイピング専門スクール「プロトアウトスタジオ」を立ち上げる。
2018年4月よりデジタルハリウッド大学大学院の非常勤講師も務めている。
日本最大規模のIoTコミュニティであるIoTLTの主催、Microsoft MVP Visual Studio and Development Technologies (Node.js)、世界で22名の第1期LINE API Expertsの一人。
各種ハッカソン運営や、審査員など多数
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