コロナウイルスがシリコンバレーにもたらしたもの|シリコンバレー最新動向 その1 | イノベーション創出のヒント JMA GARAGE

コロナウイルスがシリコンバレーにもたらしたもの|
シリコンバレー最新動向 その1

コロナ禍で事業の立て直し、採用の見直しを迫られているなかで、人材戦略はどうあるべきなのか。
昨年、シリコンバレーに長期滞在し、「シリコンバレーイノベーションプログラムの受講とともに、HR テックの年次カンファレンスに参加した、日本能率協会の平井亜矢子がシリコンバレーのイノベーションを生み出すエコシステムの動向とカンファレンスをレポートする。

コロナウイルスがもたらしもの

猛威を振るった新型コロナウイルス(COVID-19)は 、日本企業の経営基盤である「人材」「組織」に関して内在していた課題が露呈する事態となった。例えば、緊急事態宣言における外出自粛により対応が迫られた「在宅・リモートワーク」。これには、働き方改革やダイバーシティ、自律人材の育成、信頼関係のある組織づくりといった、これまでの企業の経営者や人事が取り組んできた施策に対する成果があらわになったと言える。

2016年から内閣に働き方改革実現会議が設置され、政府から企業の働き方の多様化や柔軟性を進めるよう方針が示された。この方針を受けて大手企業を中心に多様な働き方を社員が選択できる制度が整えられてきた。しかし、運用が業務の実態に伴っていない、社員の意識が追いついていないといった問題が多く、活用が進まずに制度が形骸化してしまった企業も多いのはないか。今回の緊急事態によって、ここ数年の取組みが真の意味で効果的であったのかが問われることとなった。

またこれらの問題の中には「遠隔の社員を管理できない」「メンバーとコミュニケーションが取れない」「モチベーションを維持できない」といったマネジメント上に関するもの多い。このような問題の本質は、在宅・リモートといったシステムや形態にあるのではなく、日常の部下・メンバーとの関係性、評価のあり方、仕事との向き合い方など、結果的に平時のマネジメントや人材力・組織力の質が大きく影響している。

今回の未曾有の危機を契機として、日本企業がこれまでの組織・人材の本質的な問題に改めて正面から向き直し改革を進めていくのか、もしくは時間の経過とともにこの問題を隅に追いやってしまうのか。現在の対応次第で、数年後の企業の競争力の分かれ目になると感じている。本レポートで紹介する研修やイベントの内容は新型コロナウイルスが猛威を振るう半年前に行われたものだ。しかし、このシリコンバレーというエリアを中心に広がっていた企業と人材の関係性、それを支えるテクノロジーなどのインフラに関する最新情報は、これからのニューノーマル化におけるマネジメントのあり方を考えるうえで、有益な情報になるのではないかと感じている。本レポートがこれからの自社の人材戦略・組織戦略を考えるうえでの一助となれば幸いである

日本企業における人材・組織の課題

2019年度の日本能率協会「経営課題実態調査」では現在~5年後の経営課題について調査を行った。現在の課題の優先度として高いものは「収益性の向上」となっているが、3年後・5年後においては「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)となっている(図1)。

図1 現在・3年後・5年後における経営課題

現在については「収益性」最も高いが、3年後・5年後では「人材の強化」の重要性が高まっている。また、「新商品・新サービス事業の開発」については現在~5年後まで高い値を示している。(出典:2019年度日本能率協会「日本企業の経営課題」レポート)

また、「新製品・新サービス・新事業の開発」も上位の課題として挙げられている。グローバルとの競争戦略の中で、日本が新規のビジネスを生み出す力が弱くなっていることは長らく日本企業の悩みの種になっている。新しい事業の成長は既存事業を含めた会社の事業ポートフォリオにも影響してくるため極めて優先度の高い課題だと思われる。

長年の課題となっている「人材」「新事業の開発と成長」の二つの課題解決のために、日本企業もさまざまな戦略や施策を試みている。「2019年度研修サービス市場の実態と展望(矢野経済研究所)」によれば、企業の教育予算の投資額の増加と伴い、2011年度4,520億円だった企業向け研修の市場規模は2019年度には5,290億円まで膨らんでおり、企業が人材開発に注力していることがうかがえる。また「新事業の開発と成長」についても、大手企業を中心に新規事業開発のための組織体制の変更、M&Aやオープンイノベーションを含めた外部企業との連携など、会社を上げての開発投資がなされている。各社の挑戦は少しずつ実を結び始めているところもあるが、ダイナミズムのある大きな成果を挙げた企業はまだ少ないのが実情である。

今回はこの「人材強化」「新事業開発のための組織づくり」の二点に焦点を絞り、シリコンバレーの動向やそれに付随するテクノロジーの人材開発への活用事例などを紹介しながら、日本企業の課題解決の方向性を探っていく。

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