金成 和喜氏によるイノベーション発想法|イベントレポート | イノベーション創出のヒント JMA GARAGE

金成 和喜氏によるイノベーション発想法|イベントレポート

39年間、大手外資系企業の中で「イノベーションを起こし続ける組織づくり」を実際に主導したご経験を持つ金成 和喜氏を講師としてお迎えして、特別講演会を開催しました。

当日は、金成氏のキャリアを通したご経験をもとに【継続的にイノベーションを起こす具体的な組織づくり】というテーマについて語って頂きました。

当日の模様から一部内容をレポートとしてお届けします。

 【イベント詳細はこちら】
 「金成 和喜氏によるイノベーション発想法」オンライン特別講演会
 https://jma-garage.com/lecture200610/

日本人が「イノベーション」を起こすのが苦手な理由

日本人はイノベーションを起こすのが苦手だと言われるのは、どうしてなのでしょうか。人間の脳は、どんなに真剣に見ていても、気づかないものは気づかない。見えているはずなのに、なぜ気づかないのか。実はこれがイノベーションにとっては、重要なヒントなのです。

気づかないのは能力がないからでも、ぼーっとしているからでもありません。これは脳の癖(=傾向)なのです。人間の脳は、注目していること以外、極力エネルギーを使わないようにできているのです。意識を集中して、見えないものを見えるように努力しないと一生見えないということ。イノベーションを起こすヒントは、脳の構造に大きく影響していると理解しておきましょう。

では、どうしたら気づけるようになるのでしょうか? ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』(※1)に大きなヒントがありました。脳は騙されやすく、合理的な思考、論理的な思考は怠け者だとこの本には書かれています。いつもと違う見方を自分に強制する。たとえば、無理やり百個の気づきを列挙する、他人が見落としているものを見つける、赤いものだけに注目する。こうした「何か」に注目するというような、いつもと違う発想・論理を身につける。もし自分だけでは限りがあるなら、他人の見方を借りてみる。ここにヒントがあります。

新しいものを生み出すヒントは、自分の発想だけでは広がらない領域を上司や同僚、周囲の方など、他人の見方や他人の言葉を借りることで広がっていきます。単純な答えで終わるのではなく、そこから何か広がりはないか、ディスカッションすることでイノベーションは広がっていくのです。

脳の構造と国民性

日本人は、国際社会においてどのように思われているのでしょうか。国際会議において、有能な議長とは、「インド人を黙らせ、日本人に自分の意見(イエスかノー)を聴衆の前ではっきりと言わせることができる人」というジョークがあります。日本人は、はっきりと自分の意見を言わないのです。ルース・ベネディクトは『菊と刀』(※2)で、この背景を「日本人の特質は恥の文化である」と言い切りました。

日本人は、人前で失敗することは恥だと小さい時から叩き込まれています。こうしたことは欧米社会では考えられません。キリスト教文化では失敗しても教会で告白し、許しを請えば問題がないとする考え方です。

「武士は余計なことはしゃべらず、喜怒哀楽を表に出さない」と新渡戸稲造の『武士道』(※3)にもあります。国際会議では、理解していないのに、ただ笑って首を縦に振る人が日本人だと思われています。これらは小さい時から、集団の目を強く意識させる、「みんなと同じことをしなさい」「一人だけ目立つことをするな」と言われた教育にその要因があります。

また、路傍の石にも手を合わせる宗教観です。日本人は曖昧な基準、相対的なものを認めたがります。これに対し、欧米やアラブでは一神教で唯一の神であり、絶対的な基準で物事を判断します。ここに大きな差が出ているのです。国際的に大きな活動しようと思ったときに、日本人は他の国とは全く違う教育を受けているという宗教的なバックグラウンドがあり、これがイノベーションを起こす上で、少し邪魔をしているのだと理解しておきましょう。

さらに、ワスプ(WASP:ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)の人たちに対して、非論理的な劣等感を感じているのも日本人の特徴です。どこか遠慮して、自分の意見を堂々と言わず、玉虫色の返事をするのが日本人です。また、少数派のときには、堂々と自分の意見を言えない。これはイノベーションにとって大きなマイナスです。人と違うことを言えばいいのです。

もう一つ日本人が弱いのは、世界の常識に関して、知識が不足していること。最近では、ハラール(Halal)は一般的に認知度が上がっていますが、コーシャ(KOSHER)については知らない人が多い。欧米ではほとんどの人が知っています。こうしたことを理解していないと、グローバルで多様な人々と付き合っていく上で、大きな間違いを犯すこともあるでしょう。もっと世界の常識を知るべきなのです。日本人はもっと海外に目を向けてみた方が、イノベーションにつながっていくと思います。

イノベーション力を強化するヒント

具体的なアプローチとして、自分の脳、ものすごく怠け者の脳を、どうしたらイノベーティブにさせることができるのか、少し見ていきます。

最近よく聞かれる言葉に「インサイト」があります。インサイトに一番近い日本語は「ひらめき」です。気づくためのインスピレーション(直感力)も大切ですが、重要なのは本質を見抜く力、インサイト(=直観力)です。とにかく気づいたコト・モノ・ヒトになぜ興味を持ったのか、「なぜ、なぜ、なぜ」と自分に問いかけていきます。これを繰り返すことで、はじめてイノベーションのプロセスの道は開いていくのです。

「ひらめき」と「思いつき」は違います。ひらめきは、一見無関係に見える別のものがつながっていくこと。一方、思いつきは心に浮かんだだけで他人に説明できず、他人に説明しても「だから何なの」と言われるものですが、ひらめきは説明できます。なぞかけのように「何々とかけて、何々と解く」、その心は。これがインサイトです。この組み合わせをすることが、意外なほど大きいイノベーションにつながる可能性があるのです。

20世紀のイノベーションは「製品」でしたが、21世紀は「ビジネスモデル」だと言えるでしょう。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)企業のビジネスモデル自体がイノベーションだと言われています。顧客の問題解決を行うビジネスモデル自体がイノベーションになってきています。

それでは今後イノベーションを起こせるのは、どのような人材なのでしょうか。マーケティング論で有名なフィリップ・コトラーは、これからは、R&D(Research & Development)ではなく、C&D(Connect & Development)が大事だと言っています。情報と情報を組み合わせて「新しくつなぐ」ことが、いかに重要な組み合わせを生み出すか。これからイノベーションを起こすには、断片的な情報と情報を結びつけることが非常に大きな意味を持ってくるのです。

※1:『ファスト&スロー』上下巻,ダニエル カーネマン(著),村井章子(翻訳),早川書房,2012年
※2:『菊と刀』ルース・ベネディクト,1946年
※3:『武士道』新渡戸稲造(著),矢内原忠雄(訳),岩波書店,1991年

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